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こどもの病気との向き合い方 〜防げるものは防いだ上で病気になるのをどう前向きに捉えるか〜
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    埼玉県所沢市 くさかり小児科  草刈章


    「かぜ」の意味論
     こどもの病気でもっとも多いのは発熱、鼻水、咳が出る「かぜ」、上気道炎といわれるものです。この病気を中心に、症状の意味や対処の仕方について、私が普段、患者さんやお母さん方に話していることを述べてみたいと思います。


    発熱はお子さんをウルトラマンにする
     「熱がでると辛そうだし、夜も眠れないし、けいれんも心配。早く下げなくちゃ。」と思うお母さんも多いかもしれません。しかし発熱こそ、病気が治るためには是非とも必要なものです。

    体温が高くなるとウイルスや細菌などの病原体の増殖が著しく抑えられます。逆に体の免疫力は5倍から10倍以上も強くなります。発熱しているお子さんはウルトラマンのように病原体にたいして強力なパワーを持つのです。

    ですから安易な解熱剤の使用は勧められません。むしろ保温に注意すべきです。頭痛や不機嫌、不眠などを訴えている場合は浣腸がよく効きます。市販のイチジク浣腸の使用が便利です。解熱剤を使用する前に浣腸をしてみましょう。


    かぜは自然に治る、でも怖い病気も
     「かぜ」の原因はほとんどウイルスです。ですから特別な治療をしなくても自然に治ること多いのです。しかし稀ながら命にかかわる病気もあります。

    インフルエンザは毎年、12月から3月くらいまで流行しますが、脳炎、脳症、肺炎を起こすこともあります。ワクチンはこのような重症化を防ぐ効果があり、乳幼児には必ずワクチン接種を推奨します。

    また一夜でけいれん、意識障害を起こし、不幸な転帰をとる細菌性髄膜炎などもあります。病気のはじめは発熱や不機嫌などの症状しかないので、病院で「かぜですね。」と診断されて、お薬をのませていても翌朝には急変したということがあったのです。

    今ではヒブや結合型肺炎球菌のワクチン(プレベナー)の接種により、こうした細菌性髄膜炎は大変少なくなっています。この二つのワクチンは、生後2ヶ月から接種できます。是非、受けて下さい。


    注意しなければならない病気の見分け方
     また39℃以上の高熱が続く時、発疹やリンパ節腫脹(リンパ節の腫れ)があるとき、呼吸困難や嘔吐下痢が頻回のときは重症の病気のこともあります。私はこのような場合では必ず血液検査や迅速抗原検査を行って、どのような病気なのか判断することにしています。

    高熱の場合は、なるべく検査で原因を確認し、それに合う治療をすることが何より大事です。検査もしないで抗生物質を処方されたら、医師を替えた方がよいかもしれません。


    鼻水、鼻づまりは新たな病原体の侵入をブロックするもの
     「かぜ」をひくと小さな子ども達が困るのは鼻水、鼻詰まりですね。これも辛い症状の一つですが、意味なく起こっているわけではありません。

    「かぜを引く」ということは体に好ましくない侵入者、ウイルスが入ってきて体の細胞を壊しながら増殖することです。かぜの病原体はほとんどが鼻から入ってくるので、鼻を狭くして抗ウイルス作用をもった成分を含む鼻水を出して新たな病原体の侵入を阻止しようとしているのです。

    ですから無理に薬で止めようとするのはよくないことです。鼻水は優しく吸引してあげてください。また風呂に入れ、部屋を加湿して暖かくすると軽快します。


    咳は命をつなぐための不可欠の症状
     咳もお困りの症状の一つですが、かぜにともなう咳はかぜから回復するために絶対に必要なものです。ヒトが生きて行くために、休みなく呼吸をしなければなりません。わずか3分間でも中断すると重篤な脳障害を起こすか死んでしまいます。

    呼吸をするときの空気の通り道、鼻や咽、喉頭、気管、気管支を気道と言いますが、かぜのウイルスは気道の上皮細胞に感染し、それを壊しながら次々と増殖していきます。

    体の免疫細胞であるリンパ球は感染細胞を破壊し、抗体を作ってウイルスを攻撃します。好中球やマクロファージなどの細胞もこの戦いに加わり、炎症という状態が起きて大量の分泌物、痰が生じます。

    このままですと呼吸ができなくなり、細菌の二次的な増殖が起きて肺炎も起こります。このような事態を防ぐために、強い気流を作って分泌物をはき出す、それが咳なのです。

    ですから「かぜ」を引いているときは咳止めのような薬を与えてはいけません。痰のはき出しを楽にするような去痰薬であればよいかもしれません。

    気道が修復されて呼吸が普通にできるようになるには1週間から10日かかるのは普通のことです。それ以上続いたり、鼻汁がひどいようであれば急性副鼻腔炎などの合併が疑われます。

    自然治癒力を最大限に高めるには?
     このように私たちヒトは病気を自力で治すための様々な仕組みや機能、自然治癒力をもっています。発熱や咳、鼻汁はその力が働いていることを示しています。

    ですからそのような症状を薬で抑えるのではなく、その力が十分に発揮できるよう安静と保温に充分注意することが重要です。そして元気なときはなるべく外遊びをし、過剰に清潔にしないように気をつけ(入浴時は石鹸をあまり使用しないOR使用しすぎない)、バランスの良い食事をすることです。


    万が一の重症の病気を防ぐ頼もしい味方、それはワクチン
     多くの病気は自然に治りますが、それでも場合によっては脳炎、脳症、肺炎などの重篤な合併症を起こすこともあります。あるいは病気自体が治療困難ということもあります。

    このような病気は少ないものの、いつ誰がなるか予想もできません。万が一の病気や合併症を防ぐにはワクチンで予防できる病気はしっかりと予防接種を受けることが大事です。

    この数年、日本でも接種できるワクチンが増えてきました。特に生後2ヶ月から接種するヒブ、肺炎球菌ワクチンはもっとも恐ろしい病気の一つ、細菌性髄膜炎を防いでくれます。

    これらの二つのワクチンが広く接種されるようになってから、明らかに髄膜炎や重症細菌感染症が減ってきています。ワクチンに関する情報が様々なところから提供されています。これらをよく理解して、スケジュール通りの接種を行いますよう、強くお勧めします。

    「かぜ」こそヒトを丈夫にする

    1歳で保育園に入ったお子さん、最初のころはしょっちゅう熱を出して、
    度々保育園から呼び出しの電話を経験したお母さんも多いことでしょう。そのようなお子さんも年中、年長児になると滅多に熱を出さなくなり、丈夫になります。それは国に国民の安全と安心を守るための自衛隊、警察、海上保安庁などの組織があるように、私達の体の中にも免疫という仕組みがあるからです。最初にかぜのウイルスの攻撃を受けたときは、
    有効な抗体をすぐには造りだせず、発熱や鼻水、咳などでなんとか病原体を撃退しようとするのです。これは自然免疫という働きです。その間に病原体を調査、分析し、確実に有効なウイルスを攻撃できる抗体(特異抗体)を造りだして病気を治すのです。これは獲得免疫ともいわれています。このときの調査結果(抗原情報)はしっかりと記憶され、二度目に同じ病原体が入ってきたときは素早く対応し、熱や咳などがひどくなる前にウイルスを撃退するのです。1〜2歳ころにしょっちゅう「かぜを」をひくのは、けっして無駄にひいているわけではありません。人間集団のなかに必ず存在しているウイルスに対してしっかりと免疫をつくり、大きくなってさまざまな活動をしなければならなくなったときに、体を病原体から守ってくれるのです。「かぜ」を引くことは我が子が将来、元気で活躍するための「体造り」とご理解いただきたいと思います。

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