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お父さんお母さんに知ってほしい小児医療の現状
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    (しろうジャーナルNO.17 2010年1月 配信)

     

    「お父さんお母さんに知ってほしい小児医療の現状」

     

    東京女子医科大学小児科(循環器) 名誉教授

    日本小児科学会 小児医療改革・救急プロジェクト委員会委員長
    中澤誠先生より

     

       子どもたちの病気は親にとってとても心配なものです。特に、急な病気の時にはなおさらで、すぐに医師に診て欲しいと思うのは当然でしょう。

    我が国では子どもの人口は全体の14%位ですが、多くの施設では夜間や時間外の救急患者の半分くらいが子どもだと言う数字があり、親御さんの心配を表しています。

    子どもの急患の95%は医師の側から見れば軽症なのですが、親御さんが重いか軽いかを判断するのは難しいものです。

    そこで医師会や日本小児科学会は「小児救急とは保護者が救急と感じたら全て救急である」としました。

    すなわち、この小児救急の定義は、子育てに不安のある保護者には極めて優しい定義です。

    不安を生む要因として少子化、核家族化、情報社会(過多)などがあり、それに加えて医療政策の諸問題から、子どもの医療機関受診は今や完全に24時間365日化していて「コンビニ化」と呼ばれています。

    (独り言:コンビニはスーパーより割高なのに医療はタダ。これってコンビニ?)

    さらに、ご家族の専門医志向そして高度医療志向が強くなっていますので、子どもが急病になると診療所ではなく小児科医のいる病院に受診が集中し、それが夜などの時間外に多いのです。本来は入院患者に備えるはずの小児科当直医が、時間外に来る外来患者も診ることになりますので、当然労働時間が長くなってしまいます。

    小児科医は概して、困った家族に優しく、病気の子どもたちが目の前にいると疲れた身体に鞭打っても診察を続けますので、結果的に50歳代の医師ですら過労死基準を超える勤務時間になっているのです(日本小児科学会調査)。

    フラフラになった医師の診察態度が気に入らないと言って激しく怒鳴られて、ノイローゼになり、小児医療の現場から去って行った後輩がいます。必死になって頑張っていてもこれでは悲しいですね。

     

       我が国の病院で小児科を標榜している施設の約60%で小児科医は3人以下しかいません。

    それらの病院では、その小人数で通常の外来と入院患者の診療を受け持ち、当直をして夜間救急に対応せざるをえませんし、その上、翌日も平常勤務が殆どです。

    その結果、既に述べたような長時間勤務となるのです。

    病院によっては、現場に居なくても自宅待機のオンコール制をとっているところもありますが、それでもゆっくり休むことは出来ません。皆さまの近くの病院は如何ですか?

    平成13年に厚生労働省がPatient Safety Actionとして医療安全のための10の要点をあげていますが、その7番目に「自分自身の健康管理 医療人の第一歩」とあります。健康の源は何と言っても睡眠です。

    医師の超過重労働による健康への影響が、医療安全を脅かし患者を危険にさらす可能性があることを認めている訳ですが、現状では大多数の病院勤務小児科医がこれを守ることは不可能です。

    50歳近くで月に6〜8回の当直をしている小児救急医療では有名なバリバリ現役のある先生が、真夜中に診た患者の診断と治療が正しったかどうか、夜が明けて冷静に振り返ると心配になることがしばしばあると話してくれて、過労による集中力の低下が心配だと言っていました。

     

       そんな状況なので、病院勤めで疲労困憊してしまった小児科医が退職して開業してしまう傾向が続いています。

    このため、小児科医がいなくなる病院では小児科そのものを閉めてしまわざるをえません。

    事実、小児科の看板を掲げている病院は減少の一途を辿っている一方で、開業の小児科医院は増えています(厚労省統計)

    以前、小児救急の話をいろんな所でしていましたが、ある時、出席していた開業の小児科医が「病院が患者さんを引き受けられなくなったので、自分も時間外診療を止めました」と言っていました。

    外来医療が安心して出来るのは、後ろに入院施設があるからなのです。

    皆さんも子どもがある程度重い病気になると、やはり、入院を考えるでしょう。

    そして、それが自分の住んでいる近くにあって欲しいと願うでしょう。

    でも、小児科医の数には限りがありますし、各施設に3人程度の小児科医しかいないとなると、そこは上に書いたような状況でやがては消えていくでしょう。

    今、学会や行政では、近くの医療を守りながら継続あるシステムをどのように構築するのか、大いに議論をしている所です。

    医療資源やそれを支える財源は当然限りがある訳ですから、それを有効に利用し、かつ、永続的に維持していくには、医療を受ける皆様の理解と協力が必須なのです。この会が、その理解と協力を推進する原動力になっていくことを期待しています。

      

     

    (しろうジャーナルNO.7 2010年1月 配信)

     

     
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