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中原利郎医師 過労死裁判終了しました
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    (しろうジャーナルNO.25 2010年8月 配信)

     

    中原利郎医師 過労死裁判終了しました

    〜医師の労働環境を守ることは、未来ある子供たちを守ること〜

     

    中原のり子 さんより

    小児科医師・中原利郎先生の過労死認定を支援する会

    http://www5f.biglobe.ne.jp/~nakahara/

                        

     1999816日早朝、都内・佼成病院に勤務していた私の夫、小児科部長(代行)だった中原利郎は、月6回から8回の宿直等の勤務による過労からうつ病を発症し、ま新しい白衣に着替えて病院の屋上にある煙突の上から身を投げました。享年44歳。
    私と三人の子どもが遺されました。
    子どもが大好きで、夢は小学校の先生か小児科の医師になることと語り、仕事を誇りにして真面目に働いていた人が何故、死ななければならなかったのか

    混乱の中で、部長室の机上に残された「少子化と経営効率のはざまで」を手に取り、初めて夫の苦悩を知りました。
    そこには「国の医療費抑制政策」「小児科の構造的不採算」「頻回の当直による疲労蓄積」「増加する女性医師への社会的支援がないこと」など、様々な問題が提示されていたのです。この問題を世に問うことが私の役目と心に刻みました。

     

    2001年、新宿労働基準監督署に労災申請をしましたが、1年半後不支給決定を受けました。
    当直は労働時間とは認めないというのです。

    月に何十回当直しても、過重労働でも長時間労働でもないという監督官の説明には納得できず、
    行政訴訟を起こしました。中原利郎の勤務状況は過重な負担があったと行政裁判判決で労働災害がようやく認定されたのは2007年でした。
    同僚の女性小児科医師が当直の過重性を証言くださったおかげでした。
    行政訴訟とは別に、勤務先病院の安全配慮義務違反の認定を求めた民事訴訟では、1審判決は過労も認めない内容でした。
    高裁に控訴して、うつ病と業務の因果関係は認められましたが、医療ミスも無断欠勤もない医師が、死ぬほど疲れているとは予見できないとの判決が言い渡されました。

    この判決を受け入れることはできず、最高裁判所に上告受理申立を致しました。
    最高裁判所には毎月通って「公正な判決を求める」33千筆の署名と、「高裁判決に異議あり」という356名のメッセージを届けました。
    応援してくださった中には、『知ろう!小児医療 守ろう!子ども達』代表の阿真京子さんほか、小児科医を守ろうという思いの会のお母さん達も大勢いらっしゃいます。
    署名募集と同時に開始した「過労死から医師を守ろう」「医師や患者さんも自分の命を大切にしよう」という「いのち守る」ボールペン作戦も、多くの方のご賛同を得ることができました。
    皆様のご支援の力が私の勇気を奮い立たせ、また、このような社会的な動きが後押しして、本年78日に最高裁判所に於いて「我が国におけるより良い医療を実現する」ために、前例のない和解が成立いたしました。


    中原利郎の過労死裁判は終わりました。今回の和解内容を現場の改善に生かそうと、声明を出してくださった全国医師ユニオンのように、和解を日本の医療現場を変える一歩ととらえる動きも出ております。
    父親の背中を見つめ、同じ小児科医師となった娘は「患者さんの命を守るには医師の心身の健康が必須だと実感している」と申します。
    夫・利郎が亡くなった11年前に比べて、医師の労働環境が目に見えて改善しているとは思えない現在、「医師の労働環境を守ることは、未来ある子供たちを守ること」と訴える活動を、今後も続けたいと思っています。
    『知ろう!小児医療 守ろう!子ども達』の会の皆様のこれまでのご支援に、心から感謝申し上げます。
    これからの皆様のご活動のご発展を、心から応援しております。本当にありがとうございました。

     

     
    参考資料:和解条項前文

    「申立人らは、亡中原利郎医師(以下「中原医師」という。」の遺志を受け継ぎ小児科医の過重な勤務条件の改善を希求するとともに、労働基準法等の法規を遵守した職場の確立、医師の心身の健康が守られる保健体制の整備を希求して、本件訴訟を提起したのに対し、相手方は、相手方病院の勤務体制下においては、中原医師の死亡について具体的に原因を発見し、防止措置を執ることは容易ではなかったという立場で本件訴訟に対応してきたところ、裁判所は、我が国におけるより良い医療を実現するとの観点から、当事者双方に和解による解決を勧告した。 当事者双方は、原判決が認定した中原医師の勤務状況(相手方病院の措置、対応を含む。)を改めて確認するとともに、医師不足や医師の過重負担を生じさせないことが国民の健康を守るために不可欠であることを相互に確認して、以下の内容で和解し、本件訴訟を終了させる。(以下略)

     

     

    (しろうジャーナルNO.25 2010年8月 配信)

     

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