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保護者と子どもの『安心』のため、日本にもっとホームケアの知識を
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    小児救急医・井上信明先生
    「保護者と子どもの『安心』のため、日本にもっとホームケアの知識を」
    編集 玉木 美企子

     

     

     

    【適切な処置に「不可欠」な存在とは・・・】

     

     

     

     

    国立国際医療研究センター 国際医療協力局 人材開発部研修課 

     

    小児救急医・井上信明先生

     

     

     

    アメリカで小児救急医療を学び、いわゆるER型救急と呼ばれる、
    重症度や原因に関わらず「すべての子どもをまず受け入れる」救急を、
    ここ日本でも、以前の職場である都立小児医療センター救命救急科で実践されていました。

     

     「私達は内科や外科などの専門診療科や臓器にこだわらず、
    急を要する医学的問題を抱えた子ども達全員をまず診察していました。
    その上で、本当に専門医が必要な子だけ専門医に診てもらうようにし、
    それ以外は自分達で継続して診療することもあります」。
    井上先生がそう話す通り、
    「小児救急」とひとくちに言っても内科、外科、外傷、
    ときに精神疾患の分野の問題まで、どんな症状でも診察するのがER型救急の基本。
    このような現場で、一人ひとりの患者を適切な治療へと導くためには、
    膨大な知識と経験、そして「保護者との丁寧なコミュニケーションが欠かせない」と言います。

    【まずは子どもの「ふだん」を知ること】

     「診療でまず確認するのは、心拍数や呼吸数といったバイタルサイン。
    生理学的な兆候は、症状の重さをみる上で大切なデータとなります。
    これと同じくらい大切なのが、保護者の方からの『ふだんと比べて状態はどうか』
    という情報提供です。熱が高くても、ふだんと変わらず元気ならば、何か処置をしなくても
    よくなることがほとんどです」と、井上先生。
    加えて、予防接種歴についても、
    「保護者の方に把握しておいていただくか、母子手帳をお持ちいただくとよいですね」
    と話します。
     また、家庭で保護者が病気や怪我をした子どもと向き合い、
    家庭でできるケアを行うことを、「ホームケア」と言いますが、
    小児医療の分野では重要視しています。

    そして井上先生も日々診察室で、ホームケアの知識を広める実践を行っていると話します。
    「例えば、嘔吐という症状なら、薬剤や点滴に頼らないで済むように、
    どのような水分をどのように摂るとよいのか、具体的にしっかりと伝えることにしています」
     一分一秒を争う、というイメージのある救急の現場ですが、
    それでも井上先生が密なコミュニケーションを心がける理由は
    「次に子どもが同じような状態になったとき、保護者の方が
    薬や点滴を求めて慌てて病院を受診するのを予防することにつながるから」。
    「安易に薬を投与して診療を済ませ、再受診のポイントを伝えるだけでは、
    『予防』という観点からは不十分だと考えています。子どもの状態をしっかりと見極め、
    自宅でできる限りのケアができるようにすること。
    このホームケアの基本さえわかっていれば、冷静に子どもの体調と向き合うことが
    できるはずなんです」(井上先生)

    【親の不安は誰のせい?】

     私達の「知ろう小児医療 守ろう子ども達の会」が設立した当時、
    小児救急に訪れる患者の約9割が入院を必要としない軽症者だといわれていました。
    専門医不足の問題も依然解決していません。
    それでも井上先生は「軽症の患者さんがたくさん受診しているという発想ではなく、
    一人一人が重症患者ではないということを確認する、そのためにしっかりとお話を聞き診察を行う。
    そういった発想で診療に取り組むことが、見逃しを減らすためには必要だと考えています」と話します。
    「むしろ、親の不安をあおっているのは、実は(不勉強な)小児科医じゃないかと感じる時さえあります。
    例えば、熱で受診したとき、『じゃあお薬だしときますね』で終わったとする。
    そうするとご家族は、これくらの熱が出ると薬を飲まないといけないと
    思ってしまうのではないでしょうか。
    あるいは吐いて、しんどそうだと『点滴しましょう』と言われる。
    この経験で、ご家族は『嘔吐したら点滴しなければならない』と思い込んでしまう。
    そういう意味では、どうしてこんな軽い症状で受診したんだ、
    と保護者にいうだけじゃなく、自分達も勉強しなきゃいけない、と思うわけです。
    しっかりと判断ができれば、小児救急に訪れる患者さんには薬はおろか検査さえも不必要なことが多いんです。
     しかし、これも小児科医が悪いのではなく、子どもの救急医療を専門にする人が少ないことが問題。
    また限られた時間で多くの患者さんを診なければならないという問題もあります。
    小児科を専門にする人が育ち、ホームケアの知識が普及し、
    正しい医療が提供できるようになれば、世の中は変わっていくと思うんです。
    そして子どもの病気をきっかけに、その家族が子どもを中心に向かい合い、
    共に育っていく機会にしてくことができればと思います。」

    【お母さん、熱に気づいてくれてありがとう】

     どんな激務の中にあっても、大切なのはまず、受診された方の不安をまず受け止めること。
    そして「これからも不安なことがあったらいつでも来ていいよ」、
    とメッセージを伝えること。そんな井上先生の患者への姿勢は変わりません。
     「子どもを大切に思う気持ちは、私達も保護者も同じなんですよね。
    多くの保護者が、子どもを思う気持ちのあまり受診されていることに気づいたとき、
    夜中の2時、3時に来てくれる患者さんに対して、むしろ感謝の気持ちで接することができるようになったんです。
    お母さん、お父さん、こんな時間にお子さんの熱に気づいてくれてありがとう。
    明日も仕事なのに、お母さん、お父さん、付き添ってくれてありがとう。
    タクシーの運転手さんも、ここまでこの子を運んでくれてありがとう。
    受付の方も、迅速に対応してくれてありがとう、って」
     

     
    そんな井上先生をはじめとする医師から、よりよい医療の提供を受けるためにも、
    私たちがホームケアを学ぶことには大きな意味がありそうです。
    「子ども達は日本の未来です。ならば子どものホームケアも救急も、
    未来に命をつなぐ仕事と言えるでしょう。私は小児救急医として、
    この嬉しさや楽しさを、小児医療を目指す若い医師や看護師達に伝えていきたいと考えています」

     「現在、私は開発途上国における人材育成に関する仕事をさせていただいています。
    前職の都立小児総合医療センターには、有能な人達が集まってきてくださり、
    同じ方向を向いて理想を実現していく体制が整った。
    それで、昔からの夢だった、現在の仕事を始めました。
    でも、実はその先に日本の地方の小児救急医療のことも考えたいと思っています。
    途上国が抱える課題と日本の地方が抱える課題に共通点があることに気づきましたし、
    何よりも『東京だからできるけど地方ではできない』と言われないように、
    すべての子ども達が最善の小児救急医療を受けることができるように、
    自分がさせていただけることを全力で取り組みたい、そう考えています」

    内容につきまして、メディカルノート
    より許可を得て、一部転載しております。
    尚、メディカルノートには、井上先生による、
    親が知っていて役立つ嘔吐の見極めや対処も掲載されておりますので、
    ぜひご一読ください。

     

     

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