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復職に向けた母乳育児に関するご質問にお答えします!
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    ひだまりクリニック  助産師 IBCLC 伊藤敦美

     

    質問:

    4月に復職を迎えます。復職を前に、卒乳したほうがいいのかなと思うけれど、

    入園や復職準備で大変な上に、子どもが風邪をひいたりしていて、計画通り進むか心配です・・・。

     

    回答:

    はじめにお伝えしたいことは、 卒乳した方が良いかというご質問について、

    復職によってやめなければならないというわけではありません。

     

    母乳育児には、お子さんの月齢や成長発達、個性、お母さんの気持ちに合わせて、

    多様な選択肢があります。

    また二人が「どうしたいか」に柔軟に対応できる機能を、お母さんの身体、

    お子さんのこころは持ち合わせていると考えてみるとよいと思います。

     

     

    【卒乳の時期や方法に一概に「これが正解!」はありません】

    それぞれの最適な卒乳の時期は、親子ごとに異なります。

    100組の親子がいれば、100通りの物語があり、すべての親子が尊重されてよいものだと

    思います。

    私たち助産師は、そのような考えのもと、伴走していきたいと考えています。

    続けたい方は、心地よく続けられるよう、やめたい方は、お子さんの様子を見ながら

    徐々に授乳間隔を伸ばしていき卒業できるよう、

    迷っている方は、以下の内容を踏まえ、ピンときたものを選択しても良いですし、

    とりあえず判断せずに流れゆくままにでも。

     

    様々なお気持ちの方がいらっしゃると思いますので、このご質問を機会に、復職などの

    きっかけと卒乳について、以下にご紹介します。

     

    【子どもの成長とともに・・・】

    おっぱいの分泌は、需要と供給で成り立っていて、

    授乳や搾乳でおっぱいが乳房から出ることによって、次の量が決まっていきます。

     

    授乳や搾乳をせず、おっぱいが乳房に留まると、徐々に分泌を抑える成分が身体の中で作られ、

    さらに授乳をしない時間が続くと、72時間以降には、おっぱいを作る細胞がどんどん減り、

    脂肪組織に変わっていくと言われています。

     

    卒乳は、月齢とともに徐々に授乳回数が減る中で、分泌を枯渇させていく身体の仕組みを利用した、

    とてもシンプルなもので、成長に合わせた生活を取り入れることで、

    お子さんの成長と共に、おっぱいはその役目を終わらせていくのです。

     

     

    【搾乳という選択肢】

    母乳を搾乳して保育園に持参したい方もいらっしゃると思います。

    各自治体や保育園などで基準があるので、面接で希望を伝え、

    1日に必要な搾乳量を相談し、保育園へ持参ください。

     

    搾乳の持ち込み方や保存方法、期間などもご確認ください。

    搾乳は電動搾乳機でも手による搾乳でも構いません。

     

    搾乳の方法は、以下のリンクからご覧ください。

    (参考)http://jalc-net.jp/FAQ/ans11.pdf

    (出典:日本ラクテーションコンサルタント協会)

     

     

    【部分的な卒乳(日中断乳)という選択肢】

    保育園にいる間はミルクで、それ以外の時間は授乳を続けるという、

    ゆるく授乳を続ける選択肢もあります。

    保育園に行くと、はじめの頃は体調を崩す機会も増えたり、

    母子で同じ感染症にかかる場合もありますが、母の体が作った免疫物質は母乳にも含まれ、

    お子さんにも届きます。

     

    また、母乳は胃で速やかに吸収しやすいため、脱水の予防や補正に効果が期待されます。

     

    保育園に行っても授乳を続けることは、免疫面、栄養や水分の補てん、夜泣きなど、

    お子さんの気持ちの調整に役に立つかもしれません.

     

     

    実際の方法ですが、慣らし保育が始まってから、分泌のコントロールを行います。

    お子さんが保育園にいる間は、お母さんはおっぱいのことを考えずに過ごし、

    お迎え後、お子さんが欲しがったら与えましょう。

    徐々に保育時間が長くなると同時に、乳汁を出さない時間を伸ばして行き、

    身体に日中は乳汁を作らなくて良いことを覚えさせます。

     

    慣らし保育時間は徐々に長くなっていきますが、土日や体調不良時のお休みで、

    お子さんによっては、「今日は、ママいなくならないよね?」と確認したく、

    一緒にいる間ずっとおっぱいを吸い付いている子もいます。

    自分で気持ちを調整しているので、飲みたいリズムに合わせてあげて構いません。

    保育園の生活に慣れてくれば、また、リズムが戻るでしょう。

     

    保育時間が長くなっていくと、おっぱいの張りが強いことがあるかもしれません。

    仕事中に気になったり、痛みを伴う場合は、少し楽になるくらいまで搾乳してください。

     

    月日とともにお休みを挟んでも、搾乳などせず気にせず仕事に集中できるようになります。

     

     

    【卒乳という選択肢】

    お二人の生活が安定し体調も良いときや、そろそろかな?と思ったら、お子さんと相談し、

    少しずつ授乳をスキップしていきます。

     

    親子にとって、最小限の授乳回数だと感じたところで、最後の授乳を行い、

    そこから飲まないように、日中はしっかり遊ばせ、

    お子さんがおっぱいを忘れる時間を積極的に作りましょう。

     

    夜間もお子さんが泣くかもしれません。受け止め、お母さん自身も休めるようお父さんなど、

    頼れるサポーターがいてくれると良いでしょう。

     

    搾乳の頻度や量は、個別性が大きいので、張りに合わせて授乳感覚や搾乳量を延ばしていきましょう。

    張りが強く分泌が多い方は、焦らず日数をかけることで徐々に枯渇させることで乳腺炎の予防になります。

     

    どの程度の張りで搾乳するかの目安は、「おっぱいに触れただけで痛い」、

    「お子さんの求めることに対応するのがつらい」といった程度までは

    張らせず搾乳したほうが良いでしょう。

     

    張りがなく、搾乳しても全く、またはほとんど乳汁がでないことが、卒乳が完了です。

     

    お子さんによっては、卒乳中から後も、抱っこを求めたり、よく泣いたり、

    おっぱいに触れる子がいます、受け入れて折り合いがつけられるようサポートしてあげてください。

    (月齢や食事の進み具合によっては、ミルクが必要な場合もあります。)

     

     

    【乳腺炎について】

    高熱や全身のダルさ、乳房の赤身や痛みなどの症状が出ます。

    しかし風邪と同様、必ずしも受診や抗生剤の投与が適応するわけではありません。

     

    ゆっくり休みつつ、冷やしたり温めたりと、気持ちの良いほうを試し、

    効果的に乳汁を外に出す(授乳を再開したり、搾乳する)ことで、

    症状が軽快すれば、ご自身で解決できているでしょう。

     

    解熱鎮痛剤を内服しながら対応すると、授乳や搾乳で乳汁を出す効果もより高まるといわれています。

    迷うとき、つらいときは、遠慮なく助産師にご相談ください。

     

     

    【授乳を続ける場合のお母さんの食事】

    これまで同様、お母さんの食事によっておっぱいの質は大きく変わりません。

    基本的にバランスよく食べていれば、お肉やケーキなどの甘いものを食べても構いません。

    コーヒーなども全くダメということではありません。

     

    栄養価の少ない食事を続けることでお母さんの体調が崩れやすかったりするので

    バランスよく色々な食事を楽しんでください。

     

    また、お母さんの体調不良時、服薬も多くの薬は、影響なく飲めます。

    (参考)妊娠と薬、授乳と薬 http://shiroujournal.jugem.jp/?eid=168

     

     

    【離乳食の進みとの兼ね合い】

    生後6か月以降は、母乳やミルクから取れる栄養に上限があるため、
    離乳食を開始し、様々な食材を試していくことを推奨しています。

    (参考)赤ちゃんの「鉄欠乏性貧血」と母乳 http://shiroujournal.jugem.jp/?eid=174

     

    一方で、食事が思うように進まず、授乳回数が減らないお子さんも少なくなく、

    心配されることもあるでしょう。

     

    食の進みは、個人差が大きく、成長発達は多様性に富んでいます。

    我が子の個性や育ちを、焦らずドシっと構えながらも、

    どこか食べるために工夫する余地はあるか?と、色々と試しながら、

    信頼できる専門職と共に成長を見守っていただけたらと思います。

     

     

    【さいごに…】

    4月を目前に、子育てと仕事の両立がうまくいくか、不安や心配があるかと思います。

    お互いのリズムがつくまでは、大変だなと感じることもあるでしょう。

     

    お子さんの応援もしつつ、ご自身のことも良くやっているとほめてあげてください。

    いずれ離れている間もお互いの時間を楽しめるようになるでしょう。

     

    卒乳について迷ったら、やめる判断を先延ばしにするという選択肢もあります。

    やめようと決めて、道半ばで再開に至った場合も、失敗したとは考えず、

    「いずれ機が熟す、まだ今は早かったのだ!」という考え方で大丈夫です。

     

    自分たちにとって良いと思った時期が、最適の時期、です。

    お母さんのどんな決断も応援しますし、迷った時は、伴走します。

    気軽に助産師に声をかけてください。

     

     

     

     

     

     

    授乳期間について参考になる指針

    ●日本の乳幼児の栄養指導指針(厚生労働省「授乳と離乳の支援ガイド 実践の手引き」)

    離乳の完了(平均月齢12〜18か月)とは、

    「大部分の栄養を食事からとれるようになること」で、

    「母乳や育児用ミルクを飲んでいないことを意味するものではない」とし、

    「子どもには、それぞれ個性があるので、画一的な進め方にならないように留意しなければならない」と記しています。

     

    ●WHO(世界保健機構)とユニセフの共同発表(乳幼児の栄養に関する運動戦略 「イノチェンティ宣言」 2005)

    「6か月以降、補完食(※母乳に加えて栄養素を補給する食事)を始めたのちも、2歳かそれ以上まで、母乳育児を続けるように保証すること」としています。

     

     

    参考文献 など

    ・NPO法人 日本ラクテーションコンサルタント協会

    ・厚生労働省 「授乳と離乳の支援ガイド」

    ・ 赤ちゃんとお母さんにやさしい母乳育児支援ガイド ベーシック・コース「母乳育児成功のための10か条」の実践  UNICEF/WHO 著 医学書院 2009

    ・母乳育児支援スタンダード 第2版 NPO法人日本ラクテーション・コンサルタント協会編

    医学書院 2015

    ・お母さんも支援者も自信がつく 母乳育児支援コミュニケーション術  

    本郷寛子・新井基子・五十嵐祐子 南山堂 2012

    ・乳腺炎 2015 母乳育児支援業務基準 第2版 公益社団法人 日本助産師会           

    母乳育児支援業務基 準検討特別委員会 日本助産師出版 2015

    ・「補完食:母乳で育っている子どもの家庭の食事」

    2006 Complementary feeding: Family foods for breastfed children. 2000

     

     

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    | shirouiryo | 赤ちゃんと母乳 | 00:03 | - | - | - | - |
    赤ちゃんの「鉄欠乏性貧血」と母乳
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      TMGあさか医療センター(旧 朝霞台中央総合病院)小児科部長 小林真澄先生

       

      赤ちゃんにとって母乳は素晴らしい栄養です。

      それは世界共通で、WHO(世界保健機構)とユニセフでも、世界母乳育児週間を作り、

      母乳育児をすすめています。

       

      特に衛生環境の悪い国々では、母乳が一番安全でしょう。

      ただ母乳について正しい知識がないと、

      せっかくの素晴らしい母乳もデメリットになることがあります。

       

      ここ数年、小児科の外来で「鉄欠乏性貧血」の子どもが増えてきました。

      ほとんどが完全母乳のお子さんです。特に1才前後で保育園に入ってから、

      しょっちゅう熱を出すとか、一度熱が出るとなかなか下がらない、ということで

      検査に来られるお子さんに多いのです。

       

      保育園に入園するとしばらくは、すぐ風邪などを引いて熱をだしたりするものですが、

      それにしても長引く場合に鉄欠乏性貧血がよくみられます。

      そのようなお子さんは、完全母乳というだけでなく、離乳食が進んでいないケースがほとんどです。

       

      小児科医になって30余年、今までも完全母乳の子どもはたくさんいたはずなのに、

      なぜ、最近になってこれほど貧血が増えてきたのか、色々理由はあると思いますが、

      どうも「赤ちゃんには母乳さえあげていれば大丈夫」というような、

      間違った情報がインターネットなどを介して広がっているのも一因ではないかと危惧しています。

       

      赤ちゃんは1才近くなると胎内でもらった鉄が減ってきて、生理的に貧血気味になります。

      特に完全母乳の場合、生後6ヶ月を過ぎると貧血のリスクが高くなることが知られています。

       

      そのため欧米などでは、母乳だけの場合は生後4ヶ月頃から鉄剤を投与したり、

      離乳食に鉄分を強化するなどしています。

      乳幼児期の鉄の不足は神経の発達に影響するというデータも出ています。

      日本ではまだまだ、小児科医の中でもその意識が低いようです。

       

      授乳中のお母さんは意識的にタンパク質、鉄分、カルシウム、ビタミンなど、

      バランスの良い食事を心がけて、赤ちゃんにはきちんと離乳食を進めていくことが大事です。

       

      「欲しがる時に欲しがるだけ母乳をあげればよい」というようなことを言われますが、

      それは新生児から3か月くらいまでの話です。

      赤ちゃんは3〜4か月くらいになると、睡眠も含めて一日の生活リズムが作られ始めます。

      お腹がすいた、いっぱいになったというリズムもできてきます。

       

      そこで泣くたびに母乳をあげていると、いつもお腹が中途半端にいっぱいで、

      リズムができません。その結果、離乳食も進まなくなりがちです。

      赤ちゃんはお腹がすいた時以外でも泣くわけですから、

      「泣いたらおっぱい」というのは赤ちゃんにとって、どうでしょうか?

       

      少しずつ授乳の間隔をあけていって、月齢に応じた離乳食を進めて、

      最終的には1歳から1歳半くらいまでに、きちんと3回の食事が主食になるようにしましょう。



      なかなか食べてくれないと母乳をやめることは難しいと感じると思うのですが、それは逆で、母乳をやめると、食事が進むことがほとんどです。

       

      私個人的には、いつまでに母乳をやめなければいけない、ということは言いません。

      人それぞれでいいとは思います。ただ、きちんと3回食が確立されることが前提です。

       

      最近では鉄不足だけではなく、カルシウムやビタミンD不足からくる

      「くる病」も見られるようになりました。

      くる病には日光を極端に避けようとする現代の生活も影響していて、

      適度に日を浴びる重要性が見直されています。

       

      母乳は大事ですが、それだけでは赤ちゃんは育ちません。

      体も脳もどんどん成長する乳幼児期、授乳中であればお母さんもしっかり栄養を摂って、

      そして赤ちゃんには「食べることは楽しいこと」というように覚えさせてほしいと思います。

       

      何も手作りでなくて全然構わないと思います。

      買ったものであっても、お母さんと(お父さんでももちろんいいですよ)、

      「おいしいね」と言って食べること、それが楽しい食事につながっていきます。

       

      娘の友達がフェイスブックで楽しそうに「息子(2歳)の主食、おっぱい」

      と書いていたそうです。

      もしそれが本当なら、お母さんにとっては何となくうれしいことかもしれませんが、

      子どもにとっては、決して良いことではないのです。

       

      201802

       

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