しろうジャーナル 掲載記事ブログ

長引く咳について
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    埼玉医科大学総合医療センター 小児科 森脇浩一准教授

    (しろうジャーナルNO.74 2014年10月15日配信)



     ご家族が心配されている症状の一つに長引く咳があると思います。咳が長引く場合、どのくらい以上であれば詳しい検査をした方がよいのでしょうか。

    我々がよく参考にする英文の医学情報のUpToDateというサイト(会員制)によりますと長引く咳の定義として『4週間以上』という記載があります。

    もちろんそれより短い期間でも強い咳であったり発熱を伴ったりしていて、百日咳、マイコプラズマ、稀には結核など注意しなければならない病気もありますが、1ヵ月以内で治る咳で他にあまり症状がなければ、大部分はウイルス性の気道感染と考えられます。

    しかし、一般外来では子どもの咳が1週間も続くと、「なかなか治らない」と訴える人が多い様に思います。特に幼児は咳き込み嘔吐もあり、ご家族は心配になるようです。

    私の子どもでも小学校の低学年くらいまでは夜の咳はかなり長引いた印象が残っています。家内に「嘔吐もある程なのにほっといていいの?」と冷たい眼を向けられながら、「昼間元気だから大丈夫」などと言っていたものです。(ちなみに全員、現在喘息はありません)

    もちろん、レントゲンで影があるようなもの、乳児で息を止めたりするものなどは要注意ですが、幼児で、昼間元気なものであれば2、3週間続く咳は通常のウイルス性の気道感染(いわゆる『かぜ』)で、心配のないものが多いと思います。

    しかし、医師は相談を受けるとなんとなくもっともらしい説明をしなければならず、「咳喘息」と説明を受けた方もいるのではないでしょうか。

    小児の喘息の専門の先生に話を伺うと、小児には咳喘息はかなり稀なようです。またもし咳喘息であれば気管支拡張薬が効くので、よく処方される貼付薬(ホクナリンテープ、ツロブテロールテープなど)で症状がよくなる場合はその可能性もあります。ただ、注意しなければならないのは薬を使って治ったのか、自然経過で治ったのかは、判断が困難という事です。

    以上をまとめますと、1歳以上で日中元気がよく、発熱のない咳は2−3週間続いても心配がないと言う事です。ご参考になれば幸いです。

    【Q&Aコーナー(12月15日追記)】

    Q:そもそも『強い咳』ってどんなものですか??
    A:強い咳とは感じ方に個人差があるので説明しにくいのですが、
    ひとしきり咳き込むようなことがあっても1〜2分で治まり、
    それが1晩に1〜2回で、日中元気であればあまり問題ないと思います。

    Q:レントゲンで影があるような状況のとき、親にも分かるものですか?
    A:レントゲンに影があるかどうかは症状だけでは判りにくいと思います。
    ただレントゲンに影があれば全て重症というわけでもありません。
    どのような場合にレントゲンで検査するかは医者によって方針が違いますが、
    ご家族が「肺炎が心配」と説明されれば、撮影する先生が多いと思います。
    医療機関で撮影する普通のレントゲンの線量は0ではありませんが、
    それ程多いものではありません。
     
    Q:兄弟がいる場合、咳症状を早めに緩和するのとしないのとでは感染の広がりに差が出るものでしょうか?
    A:一般論としては対症療法を行っても感染力は変わらないと思います。
    咳の原因がマイコプラズマや百日咳など抗菌薬が効果がある病原体であれば
    適切な抗菌薬を投与することで感染を防げると思いますが、
    通常のウイルス感染の咳に対してはあまり有効な対応はないと思います。


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    子どもの咳と上手に向き合う方法
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      (2011年12月15日 配信)

      子どもの咳と上手に向き合う方法

      はらこどもクリニック院長 原 朋邦先生より

       私共 小児科医が外来で遭遇する子どもの患者さんで最も多く経験する症状が咳(咳嗽)でしょう。多くの場合は、ウイルスの感染で自然に治るものですが、時として重症な病気の前触れであることもあります。

       咳で悩まされる子どもの姿は、家族も悩ませ、不安に陥れることにもなります。いきおい、私ども小児科医には、不安を和らげ、症状の緩和に努めることを求められることになります。

       でも、私が医師になりかけた頃に、先輩医師に教えられた言葉の一つに、『好い医者は、下痢に下痢止め、咳に咳止め使わない』というのがあります。『えっ、咳は止めてはいけないの?』と思われるでしょうね。下痢も病原体や異物を排除するための反射だし、安易に止めれば好いというものではないよ という戒めの言葉だと思います。此処でいう下痢止めとは腸の動きを止めることで下痢を止める、咳止めとは、脳の咳の中枢に働いて咳の反射を止める薬のことを言っています。

       実は、咳は、吸入した異物や分泌物を気道から排除するための必要な反射なのです。通常の状態では、気道には繊毛という小さな毛があって、それが外に向ってなびいています。その上を、生理的に分泌された痰が乗っかって外に向って送られています。いわば、ベルトコンベアです。そのベルトコンベアの上にのって異物や病的な分泌物は排除されています。

      ところが、気道に炎症が起こって繊毛が破壊されたり、生理的な痰の生成が損なわれると、空気に勢いをつけて飛ばすのが咳なのです。体には、咳という反射をおこすための、センサーが沢山あります。センサーが情報を感知してその情報が脳の咳の中枢に伝えられて、大きく息を吸い、喉頭を閉じて胸の筋、横隔膜が働いて内圧あげて喉頭が開いて勢いよく呼気にうつるという一連の運動が咳なのです。

      咳を訴えて来られた、または、診察に際して咳が目立つ患者さんのケアでは、先ず、原因を考えます。いつ、どのようなときに、どのような咳をするか、それがどれくらい続いているか、咳のほかにどのような症状があるか、が大事な情報です。

      丁寧に問診をすると、それだけで原因(病名)が判断できる場合が少なくありません。喘息だと言われて治療をされていた患者さんが、実は胃食道逆流症であったということがわかる場合もあります。

      身体所見の把握も大事です。鼻腔の観察、咽頭や喉頭の観察、胸部の打診、聴診、呼吸運動の観察は欠かせないものです。

      最近、RSウイルスが流行していると報じられてママ達の関心を呼びましたが、幼い乳児の細気管支炎(ウイルス性肺炎と同義)の原因になるからです。

      打診をすると弾んで聞こえる、それが両側であると、気管支が炎症で細くなっていることがわかります。更に、聴診で呼気の時間の延長が把握されば病気の診断だけでなく重症度も推定できます。発作が診察時に起こっていなくても、同じように肺の過膨張が打診で診断できると気管支喘息であることがわかります。

      また、打診で、音が鈍いのは、その部位に空気の入りが悪いことを示していますので、無気肺や肺炎があることを示唆しています。肺炎の診断がレントゲン写真を撮らないと出来ないというものではありません。聴診で、痰の粘張度が高いか、痰が多いか少ないかもわかります。それは治療に反映されます。治療の上手な医師ほど、問診や診察を丁寧に行うものです。

      私は、近年、打診という大事なスキルを放棄している医師が多いのは残念だと思っています。薬剤も、咳の症状に対してイロイロ使われていますが、最近の傾向として気管支拡張薬の貼付剤が乱用されているのも苦々しく思っています。咳というと直ぐに貼付剤を処方する医師、咳がでると考えも無く直ぐペタンペタンと貼る親は共に子どもを護ってはいないと思います。

      咳がでると、すぐに市販薬を購入するママが少なくありませんが、市販の感冒薬の多くは、第一世代の抗ヒスタミン剤、中枢神経に働く咳の薬、解熱剤が混合されている場合が多いのですが、時として生命に関わる効果がある可能性があるとしてアメリカでは2歳未満、イギリスやフランスでは6歳未満の子どもには用いることを禁じています。

      第一世代の抗ヒスタミン剤はけいれんを起こしやすい、認知機能の発達にマイナスに働くとして子どもには使わないとする学者もいます。医療で一番大切なのは安全性で、それがあっての有効性だと思います。子どものために、今一度、咳への対応も見直して欲しいと思います。


      (2011年12月15日 配信)
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