しろうジャーナル 掲載記事ブログ

第一回 小児医療基礎講座レポート
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    第1回小児医療基礎講座レポート

     

    会が発足してからの10年間、各地でパパママが小児医療について学ぶ講座を開催してきました。全国どこの自治体でも当たり前のように、子どもの病気や医療のかかりかたを学ぶことができるようになるという未来のために、「自治体向け医療のかかり方講座実践マニュアル」を発行したのが2015年。マニュアルをご購入いただいた自治体の方々からご相談、ご感想が寄せられました。

     

    痛感したのは「小児医療を伝える」仲間がもっともっと必要ということ。診断に関わることなど、医師にしか伝えられない内容もありますが、医師以外にも伝えられることはたくさんあり、さらに言えば、講座という形にも限りません。

    そこで、親子の日常に寄り添って支援する立場の方々と共に、小児医療を伝えるために必要な知識を学びたいという思いで「小児医療基礎講座」を開催することになりました。

     

    今回のこの講座は、多くの方のお力添えで実現しました。講師を務めてくださるのは、会の活動に縁のある素晴らしい先生方。そして地域医療を振興する活動ということで、公益財団法人杉浦記念財団様より助成をいただいた他、株式会社富士通総研様より会場をご提供いただいています。そして会員の皆さんによる資料印刷や、講座のご紹介などの支えも・・・。

     

    参加者の皆様も熱意を持って参加してくださった方ばかり。ここから小児医療について伝える輪が広がっていくことを期待しています。

     

     

    ◎全3日間のこの講座、まずは2017年9月23日(土)に開催された 第1日目の様子をダイジェストでレポートします。

     

    午前の部

    1.子どもの病気

    (1)    小児の救急とホームケア・小児科の現状

    朝霞台中央病院 小児科部長 小林真澄先生

     

    発熱、嘔吐、下痢、けいれんなどよく見られる症状のホームケアと受診のタイミングの見極めについて、小林先生が日頃診療に当たる中で感じることも交え、解説くださいました。

    親にとって最も大切なことは「子どもの普段」を知っておくこと。そして、医療者や支援者に大切なことは、親御さんたちにより具体的に方法や目安を伝えること。母乳と鉄欠乏性貧血についてや、生活のリズムを作ることの重要性、そして親の子への関わり方など、今の時代ならではのトピックスが満載の講義でした。

     

     

    (2)    見落としてはいけない病気・支援者がおさえておきたい病気

    聖徳大学児童学部児童学科 原田正平先生(小児科医)

     

    まず原田先生が示してくださったのは、この講座で学んだことを実践に移し、実際に伝えるために必要となる、学び方、情報との向き合い方でした。そして稀ではあるけれども、見逃してはいけない病気について、先生の実際のご経験も交えながら、教えていただきました。「小児科医の頭の中をのぞいてみよう」という視点で、日頃の診療の中で、小児科の先生は、何に留意して、外来診療をされているのかを解説いただき、とても濃厚な講義となりました。

     

     

     

    午後の部

    2.子どもの事故

    (1)    防げるものを防ごう!子どもの事故と対策

    子供の安全研究所 所長 鈴木徹郎先生(小児科医)

     

    日本の1-4歳の死亡率は他の先進国と比べて高いという衝撃的な事実。特に多いのは不慮の事故ということで、事故事例と、その対処方法について写真を交え、具体的に教えていただきました。防げる事故がなぜ繰り返されるのか、なかなか事故情報の共有が進まない日本の背景についても考えさせられました。事故予防のアプローチは大きく、教育と工学2つの側面があるとのことで、伝えることで防げる事故を減らせる可能性を感じる講義でした。

     

     

    (2)    子どもの年齢別の事故発生の現状と障害予防の取り組み

    東京大学大学院医学系研究科 地域看護学教室 博士課程

    本田千可子先生(保健師)

     

    0-5歳の子どもの事故について、現在ある様々なデータから読み取れる情報を分析し、発達段階に応じたリスクと事故予防の取り組みについて教えていただきました。特に0歳児の不慮の事故死のほとんどは窒息、最も多いのが就寝時環境下でした。赤ちゃんの発達と事故予防の環境づくりなどを解説いただいた他、救急搬送の原因について年齢別にデータを見ながら、対策や伝え方を学べる講義でした。

     

     

    3.子どもと薬

    (1)    小児の薬の基礎知識

    国立国際医療研究センター病院 AMR臨床リファレンスセンター

    松永展明先生

     

    小児科医でもある松永先生からは、子どもの薬の使い方全般について教えていただきました。まずは小児と成人の吸収・分布、代謝・排泄の違いに基づく、薬の使い方の仕組みや、治療域と副作用域についての解説がありました。また子どもによく用いられる薬や、飲ませ方のコツ、保育園での与薬についてなど、薬との付き合い方についてよくわかる講義でした。

     

     

    (2)    小児の感染症

    国立国際医療研究センター病院 AMR臨床リファレンスセンター

    具芳明先生

     

    最も多い感染症である「風邪」を中心に、免疫や、病原性微生物であるウイルスや細菌などのお話を詳しく解説いただきました。

    大きさの感覚で言うと、ウイルスが「アリ」ならば、細菌は「ゴリラ」。ウイルスは細胞に感染しないと増えない単純構造となっている一方、細菌は複雑な構造で単独で増えることが可能です。抗生物質は細菌にのみ有効なため、ウイルスによる感染症である風邪には効かないなど、違いを学びました。適切な診断と投薬につなげるための観察ポイント、そして休息と栄養、感染を広げない行動など、社会生活も含め風邪との向き合い方を考えさせられる講義でした。

     

    (3)    抗菌薬について知ってほしいこと

    国立国際医療研究センター病院 AMR臨床リファレンスセンター

    藤友結実子先生

     

    細菌を壊し、増殖を抑えるための薬である「抗菌薬」。抗生剤、抗生物質は「抗菌薬」と同義であること。明らかに細菌感染症が疑われ、抗菌剤が必要となる場合と、抗菌剤の正しい使い方。さらに中途半端に抗菌剤を使用することによって生じてしまう薬剤耐性菌について詳しい解説がありました。

     

    ウイルスが原因となる風邪やインフルエンザなどには抗菌薬は効かず、ウイルスに対しては予防が重要であること、その方法として有効な手洗いや咳エチケットなど、具体的なポイントにあふれる講義でした。

     

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    ◎10月7日(土)には、次のテーマで、第2日目が開催されました。

     

    午前の部

    1.予防接種

    (1)細胞と免疫

    慶應大学大学院医学部医学研究科(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター)古市宗弘先生 

    (2)予防できる病気について、効果と副反応

    講師:国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 生体防御系内科部 感染症科 医長 宮入烈先生

     

    午後の部

    1.日本の医療の現状

    (1)日本の医療 各地域の医療の現状

    群馬大学医学部附属病院 集中治療部(小児科)助教(病院) 中林洋介先生(元厚生労働省 小児・周産期専門官)

    (2)小児の医療費、難病等小児医療政策

    厚生労働省 健康局がん疾病対策課長 佐々木昌弘氏(元同省 医師確保等地域医療推進室長)

     

     

    ◎最終日となる第3日目は10月28日(土)の予定です。

    午前には、国立成育医療研究センターの田中恭子先生をお迎えし、「子どものこころ」について学びます。

    午後は、「医療の伝え方」について、そのコツをお伝えした後、皆さんと「伝え方」についてシェアし合い、ワークショップを行います。

    半日単位の単発参加もできますので、ぜひお越しください。

    | shirouiryo | 小児医療 | 06:00 | - | - | - | - |
    子どもと発熱
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                                                            はらこどもクリニック 院長 朋邦

       

      【そもそも体温とは?】

      ヒトの体の温度は測定部位によって異なります。

      体内の深部温度を「体温」と言い37.5〜37.8℃の狭い範囲で一定に保たれています。

       

      深部温度は容易には測定できないので、便宜的に肛門内、口腔内、腋窩(脇の下)で測定されますが、

      この順番に体温に近いのです。

       

      体温が上昇する際、自分で体温を高く保っている場合を「発熱」、

      コントロールが出来なくなり結果として上昇してしまった場合を「高体温」と言います。

       

       

      【発熱とは?】

      ヒトの体には、ウイルスや細菌のような異物が侵入した時に、

      異物と認識して「活性物質」というものを産生する細胞があります。

      「細胞が作る活性物質」という意味で、「サイトカイン」と言いますが、

      体温を上昇させる働きを持つサイトカインを「発熱サイトカイン」と言い、

      現在5種類くらいが判明しています。

       

      それは、中枢神経内にある「体温の調節中枢」に働きかけます。

      体温の調節中枢が司っている温度を上昇させるのです。

       

      体は、いわば中枢神経の指令に従って体温を上昇させるように反応し、

      手足を流れる血液を減らしたり、表皮を流れる血液を減少させ、熱を失うのを減らすようにします。

      従って、手足は冷たくなり皮膚は青ざめます。

       

      それでも指令の体温に達しないと、体を震わせて熱を作ります。

      これが「悪寒・戦慄」の状です。本人は寒さを感じています。

       

      中枢神経の指令以上の体温になると、今度は熱を失わせて、一定に保とうとしますので、

      手足は暖かくなり、皮膚の血色がよくなります。

       

       

       

      【“発熱”は冷やさない】

      体が体温を上げるようにしているときに、体全体または一部を冷却すると、

      もっと体温を上げるように体は反応しますので、かえって体温が上昇することになります。

       

      発熱時にけいれんを起こすこどもは約10%いますが、

      体を冷やすと、けいれんを起こす可能性を高めます。

       

      中枢神経が熱を失わせようとするタイミングでは、冷やすと気持ちがよいかもしれませんが、

      冷やしすぎると体温の上昇を誘発します。

      だから、発熱のケアとして冷やすということのメリットはありません。

       

      もうずいぶん前から、アメリカの小児科学や小児看護学の教科書には「冷やすな」と書かれています。

      中枢神経が熱を失わせようとするのが妨げられると、かえって体温が上昇するからです。

       

       

      【“高体温”は冷やす】

      環境の温度が高い、湿度が高くて体の表面から水分を蒸発させることで熱を失うことができない。

      あるいは、運動などで体の中の熱を上昇させることが起きている、といった要素が加わると、

      体温をコントロールできない状態「高体温」になります。体調が悪くなれば「熱中症」と呼ばれます。

       

      この場合には、生命の危険も迫ってきますので、体温を下げる必要があり、

      冷却することしか方法がありません。高体温の場合には「冷却」がケアの基本です。

       

      ヘビ、カエル、カメなどの動物は、環境の温度に体温を合わせて生きており、

      変温動物と呼ばれます。変温動物に病原体を注射などで体内に入れて

      飼育の設定温度を色々変えて観察すると、あるところまでは飼育温度(すなわち体温)が高い方が

      救命率は高くなります。つまり、体温が高い方が生体には有利なのです。

       

       

      【発熱と自然免疫】

      サイトカインは必ず二つ以上の機能を持っています。

      「発熱サイトカイン」は同時に「自然免疫」を動員させる働きも持っています。

      「発熱サイトカイン」が産生されることは、体の防御反応であると理解されています。

       

      実際に、肺炎球菌ワクチンを接種した後に発熱を伴う人の方が

      そうでない人よりも抗体の上昇率がよいことがわかっています。

       

      発熱は病気であることのサインではありますが、病原体が侵入した時に起こる有利な反応とも考えられ

      患者さんの状態が悪くなければ、急いで解熱を図る必要はないことを意味しています。

       

       

      【発熱時の水分補給は?】

      発熱の初期には、脳下垂体で産生される「抗利尿ホルモン」

      (利尿を妨げる働きをするホルモン)の分泌促進が起こります。

       

      体温が高くなると「脱水になりやすいから水分を多く与えるように」と言われますが、

      初期にはこのホルモンの作用で口渇がすぐには起こりませんので

      無理に急いで水分を与える必要はありません。

       

      水分が必要になると口渇が起こりますので、子どもさんの要求に応じてあげればよいのです。

       

       

      【解熱について】

      とは言うものの、発熱はメリットだけではありません。

      消費カロリーは体温が1℃上昇すると12%増えると言われています。

      水分の蒸発も増します。もともと体の細胞にある酵素の至適温度は「体温」ですから、

      発熱状態では酵素の働きも悪くなる可能性があります。

       

      状態によっては解熱を図る方が有利な場合があります。

      その際には「アセトアミノフェン」が用いられます。

      この薬剤は酵素に働いて、中枢神経が設定する温度を下げさせる効果があります。

       

      アメリカの育児書には体重1kg当たり15mgの「アセトアミノフェン」を推奨しており、

      8〜16mg/kgが薬用量です。

      日本では体重1kgあたり10mgが一般的に用いられています。

      中毒量は140mg/kgと言われていますので、安全域が広い薬物です。

       

      何らかの理由でこれを用いることができない場合には「イブプロフェン」5mg/kgを用います。

      ただ、解熱をしても病気が治ったわけではないので、解熱に躍起になるのは禁物です。

       

       

      【発熱と受診】

      ヒブワクチン、肺炎球菌ワクチンなどの予防接種が普及して、

      高度侵襲性の細菌感染症が非常に少なくなりました。

      発熱があったからと言って慌てて救急診療を利用する必要がなくなりました。

       

      でも、新生児や生後8週未満の乳児の発熱、

      6カ月未満の乳児が震えを伴って急に発熱をするような場合には

      小児科医の診察を受けることをお勧めいたします。

       

       

      【発熱とけいれん】

      子どもの10%にけいれんを伴うことがあると先述しました。

      熱性けいれんと呼ばれるのは、中枢神経系に異状を認めない場合をいいます。

       

      しかし、けいれんが長いと呼吸が充分にできなくて、15分以上続くと低酸素血症になり

      二次的に中枢神経系に異状をもたらす可能性があります。

       

      救急車が来るまでの時間も考慮すると、5分を超えてけいれんが止まらない場合には

      救急車を呼んで受診することを考えて良いでしょう。

      また、けいれんが停止しても意識がなかなか戻らない、

      体のどこかにまひが残る場合なども受診をお勧めします。

       

      最初の有熱時のけいれんで、すぐにけいれん予防薬の座薬を使うことに、私は賛成できません。

      熱性けいれんを起こした子どもの50〜75%が一生に一度しか起こらないのですが、

      確実に熱性けいれんでない場合には、薬を使うことで本来の病状を隠してしまい、

      正しい診断を遅らせてしまうことがあるからです。

       

       

      【発熱時の受診について】

      小児科のプライマリケアを受診される患者さんの受診理由の上位に、発熱があります。

      体温が高いほど重症というわけではありません。

       

      体温はそれ程高くなくても、グッタリして元気がないのは何が原因かを知る必要があります。

      体温が高くても、食欲もあり元気よく不機嫌でなければ重症ではありません。

      全体の感じから判断して受診のタイミングを考えて良いと思います。

       

      発熱を呈する疾患は沢山あります。原因が解らないのに安易に抗菌薬を使うのは、

      治療にならない上に、抗菌薬が効かない耐性菌を作ることになります。

       

      医療者としては、経過を詳しくお聞きする、丁寧に診察をする、

      必要に応じて検査を行うことで、発熱を呈する患者さんへの適切なケアが可能になります。

      それには、愛情をもってよく看てくださる保育者と医療者のコラボレーションが鍵になると考えています。

       

      【当ブログ記事の無断転載は、一切禁じております。
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